▼がん細胞の免疫逃避機構  ▼TMEにおける炎症細胞と可溶性メディエーターが、がんの増殖・進展に働く  ▼TME中で増加したTAM、MDSC、Tregが免疫反応に抑制的に働く

 

PTIによる抗腫瘍反応の抑制 (1)

Ⅳ. 腫瘍促進性炎症(pro-tumor inflammation:PTI)による抗腫瘍反応の抑制(1)

 

がん細胞の免疫逃避機構

がん細胞の免疫逃避機構については、現在まで盛んに研究されています。それらは大きく3つに分類されます1)

下記の機序に基づく、免疫系によるがん細胞の認識および免疫細胞の活性化の抑制(図1-A
  T細胞が認識する腫瘍関連抗原(TAA)やネオアンチゲン(腫瘍特異的変異抗原[tumor-specific mutant antigens:TSMA]とも呼ばれる)の減少や欠失
  MHCⅠ分子の発現低下による、がん抗原提示の減少
  共刺激因子の不足
がん遺伝子変異の増加(図1-B
  細胞傷害性エフェクター細胞からの逃避機構の増強(STAT3[様々な免疫抑制性分子の産生や免疫抑制性細胞の誘導にかかわる転写因子]の活性化など)
  がん細胞の生存促進因子や増殖因子の遺伝子(Bcl-2、Her2/neu)の発現増加
免疫抑制的な腫瘍微小環境(TME)の構築(図1-C
  サイトカイン(VEGF、TGF-βなど)や代謝関連因子(アデノシン、PGE2)の産生
  制御性T細胞(Treg)や骨髄由来抑制細胞(MDSC)への分化誘導・動員
  エフェクター細胞上の抑制性受容体(CTLA-4、PD-1、Tim-3など)とがん細胞との相互作用による適応免疫耐性(adaptive immune resistance)

 

 

TMEにおける炎症細胞と可溶性メディエーターが、がんの増殖・進展に働く

TMEの炎症細胞と可溶性メディエーターは、がんの増殖や進展に不可欠であり、生存、増殖、および遊走を促進します2)

TMEは、がん細胞に加えて、線維芽細胞、免疫細胞、細胞外マトリックス(ECM)、周囲の血管などの多数の細胞、およびシグナル伝達分子で構成されています(図2)2,3)
  PTIの代表的な特徴として、浸潤免疫細胞、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、脂質メッセンジャー、およびマトリックス分解酵素がみられることです4)
これらの相互作用により、増殖、生存、および遊走が促進されます。
  抗腫瘍免疫とPTI活性の微妙なバランスが崩れると、免疫回避と腫瘍の増殖が生じる可能性があります3,5,6)
  炎症細胞(腫瘍関連マクロファージ[TAM]、MDSCなど)、がん細胞、および他の細胞(線維芽細胞、内皮細胞)から可溶性メディエーター(サイトカイン[例えば、IL-1、IL-6、IL-10、TGF-β]など)が放出されます。これらにより、がん関連線維芽細胞(CAF)の活性化(インテグリンおよび増殖因子の発現)、血管新生の刺激、Treg分化のサポート、がん細胞の上皮間葉転換(EMT)の誘導がもたらされ、がんの浸潤と転移拡散を可能にします7)
  がん細胞は、浸潤、遊走、転移に働くセレクチン、ケモカイン、およびそれらの受容体など、自然免疫系のシグナル伝達分子を利用することができます5,7)

 

 

TME中で増加したTAM、MDSC、Tregが免疫反応に抑制的に働く

腫瘍促進性炎症(pro-tumor inflammation:PTI)には抗腫瘍反応を抑制する作用もあり、腫瘍の進行を促進します3)

腫瘍の進展において、PTIによりTMEのバランスは免疫抑制細胞にシフトし、抗腫瘍免疫細胞はしばしば機能不全あるいは消失します(図3)3)
  腫瘍発生時には、腫瘍促進性または免疫抑制細胞(MDSC、TAM、腫瘍関連樹状細胞[TADC]、腫瘍浸潤性B細胞[TIB]、TregおよびBregおよびCAFなど)がTMEにおいて優位となります8-11)
  ナチュラルキラー(NK)細胞やCD8+細胞傷害性T細胞(CTL;免疫療法により再活性化される)などの抗腫瘍特性を持つ細胞は、TME中で増加したTAM、MDSC、Tregによって、活性化とエフェクター機能が阻害され、しばしば機能不全となり、存在しないこともあります10)
  自然免疫の初期に応答する肥満細胞と好中球は、TMEにおいて腫瘍促進性と抗腫瘍性の両方を示します10,12)
PTIによってもたらされた炎症性免疫抑制環境3,13)では、がん細胞は免疫系に認識されなくなり、排除から免れます(図21,3,8,14)

References
1) Teng MWL, et al. J Clin Invest. 2015;125(9):3338-3346.
2) Greten FR, et al. Immunity. 2019;51(1):27-41.
3) Teng MW, et al. J Clin Invest. 2015;125(9):3338-3346.
4) Coussens LM, et al. Nature. 2002;420(6917):860-867.
5) Greten FR, et al. Immunity. 2019;51(1):27-41.
6) Lin WW, et al. J Clin Invest. 2007;117(5):1175-1183.
7) Shalapour S, et al. Immunity. 2019;51(1):15-26.
8) Veglia F, et al. Nat Immunol. 2018;19(2):108-119.
9) Hanahan D, et al. Cell. 2011;144(5):646-674.
10) Gonzalez H, et al. Genes Dev. 2018;32(19-20):1267-1284.
11) Sahai E, et al. Nat Rev Cancer. 2020;20(3):174-186.
12) Komi DEA, et al..Clin Rev Allergy Immunol. 2020;58(3):313-325.
13) Gao J, et al. Cancer Sci. 2017;108(10):1934-1938.
14) Ostrand-Rosenberg S, et al. J Immunol. 2018;200(2):422-431.

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